愛知県半田市と言えば「山車」。
昨年、5年に1度の『はんだ山車まつり』が開催され大盛況で終わりました。
半田市内10地区31輌の山車が集結し、供覧をし、見る者を魅了する山車は、先人の職人技術にて作りあげた物です。
1輌、1輌それぞれの良さがあります。
例年は、1年に1度だけ曳き廻されますが、5年に1度だけ2度見れます。
毎年3月中旬~5月上旬にかけて半田市内各地区で、
「半田の春まつり」と題して開催されています。
さて、「山車」と言っても全国にはさまざまな形をした山車があります。
日本三大祭りに、祇園祭(京都市八坂神社)、天神祭(大阪市大阪天満宮)、神田祭(東京都神田明神)が有ります。
「祭り」と言っても全国には色々な型のお祭りが有ります。
では、今年行なわれた山車祭りをご紹介していきます。
愛知県知多半島で、1番最初に行なわれる山車祭りは「乙川まつり」。
この乙川まつりを皮切りに各地区山車祭りが始まっていきます。
乙川まつりで曳き出される山車は4輌あります。
乙川まつりは、宝暦5年(1755年)以前から伝わっており歴史も古く、
あの名古屋城築城にも関わったとか。1755年は江戸幕府が存在していた時代ですよね。
そんな乙川まつりの山車は半田市内10地区の山車の中で1番大きく重量も有ります。
1番車浅井山宮本車、2番車殿海道山源氏車、3番車南山八幡車、4番車西山神楽車です。
豪華絢爛の山車にはそれぞれ特徴があります。
彫刻、幕等さまざまな容姿が有りどれを見ても楽しめます。
今回は山車を見るオススメポイント!山車の顔とでも言いましょうか、
壇箱と呼ばれる場所もご紹介します。
この壇箱の彫刻は神話や日本書記/古事記などの、
色々な物語が題材となり彫られています。順にご紹介します。
●浅井山宮本車 壇箱題材「竹林の七賢人」立川和四郎冨重作
●殿海道山源氏車 壇箱題材「樊噲(はんかい)の門破り」立川和四郎冨重作
●南山八幡車 壇箱題材「桃園の三傑」初代彫常作
●西山神楽車 壇箱題材「稲穂に鶴」「天照大神神馬」「獅子神楽」初代彫常作
浅井山宮本車の壇箱竹林の七賢人の題材は、安土城天守閣に描かれていたとか。
また、南山八幡車の壇箱には「桃園の三傑」と題して、劉備、関羽、張飛が彫られています。
関羽、張飛は直ぐに分かると思いますが、劉備はどこにいるでしょうか??
4月上旬、半田市内でもっとも多く山車祭りが開催されました。
なんと7地区18輌の山車が曳き廻されました。
はんだ山車まつりは31輌なので約半分以上の山車が曳き出された事になります。
上半田地区、岩滑地区、岩滑新田地区、協和地区、成岩地区、西成岩地区、板山地区になります。
各地区山車の保有台数は異なりますが、どれもいい!その一言に尽きます。
では、壇箱もご紹介していきます。
上半田地区には、山車2輌以外にちんとろ舟2隻が有ります。
北組「住吉丸(すみよしまる)」、南組「入宮丸(いりみやまる)」になります。
池に浮かび宵宮にて提灯灯りが揺らりと映し出される水面は幻想的です。
●北組唐子車 壇箱題材「三韓征伐宝物受取りの図」初代彫常作
●南組福神車 壇箱題材「七福神」立川和四郎冨昌作
岩滑地区には、山車2輌が有ります。
新美南吉ってご存知ですか?童話作家で「ごんぎつね」著作が有名です。
南吉の生家や幼少の頃に遊んだ神社が有りそこに2輌の山車鞘が有ります。
●義烈組八幡車 壇箱題材「猪と仁田四郎 虎と和藤内十二支」出羽看龍作
●西組御福車 壇箱題材「七福神」初代彫常作
岩滑新田地区には、山車2輌が有ります。
半田市の最西端に位置し新美南吉とも深い関係が有ります。
平成25年10月には南吉生誕百周年記念で岩滑の山車と山車揃えを行ないました。
●平井組神明車 壇箱題材「神武天皇蝦夷征伐」初代彫常作
●奥組旭車 壇箱題材「天之岩戸」初代彫常作
奥組旭車の壇箱「天之岩戸」は、日本書記/古事記でも出てくる日本神話です。
天照大神(アマテラスオオミカミ)、手力男命 (たぢからお)、天宇受売命(アメノウズメ)など登場する神話です。
壇箱の中央が、天宇受売命(アメノウズメ)になります。
協和地区には2輌の山車が有ります。
急な坂への山車の上げ下げが見物です。
また昨年、砂子組の山車鞘が改築され、
その時には、砂子組白山車、西組協和車の山車曳き出しが行なわれました。
また今年は西成岩2両、成岩1輌、協和2輌が半田市立半田博物館に揃いました。
●砂子組白山車 壇箱題材「三国志」初代彫常作
●協和西組協和車 「楠公父子の別れ」初代彫常作
協和西組協和車の壇箱題材は、太平記の名場面で、国語、国史の教科書に載っていた逸話。
成岩地区には4輌の山車が有ります。
「本成岩神事祭礼式定」嘉永2年(1849)と安政4年(1857)が有り、歴史を物語っています。
善六角より、神社への打ち込みは迫力が有りオススメポイントです。
今年は土曜日に生憎の雨でしたが、日曜日は最高の祭り日和でした。
●北村成車 壇箱題材「元寇」初代彫常作
●南組南車 「馬師皇と龍」立川和四郎冨昌作
●西馬場神車 「薬湯の図」初代彫常作
●東組旭車 「唐子遊びと鶏」立川和四郎冨昌作
南組南車の壇箱題材は、中国の神話時代に馬の医者で、
ある時に龍の病を治し何処となく姿を消した伝説上の人物。
西成岩地区には2輌の山車が有ります。
地区内には、常楽寺が有り所蔵品に国の重要文化財に指定されている像が有ります。
また徳川家康と関係深いようです。
●西組敬神車 壇箱題材「鵺退治」瀬川治助重光作
●彦洲組日之出車 壇箱題材「桃園の三英傑」初代彫常作
西組敬神車の壇箱題材の「鵺」は、平家物語で登場し、
サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足を持ち、尾はヘビの妖怪です。
彦洲組日之出車の壇箱題材は、桃園の三英傑。
あれ?と思いますよね。乙川の南山八幡車は桃園の三傑です。
同じような題材ですが、彫り方が違うのに気が付かれましたか??これも魅力なんです。
板山地区には、4輌の山車が有ります。
板山神社と八幡神社の二社あり、板山神社には、小板組・本板山組・大湯組。
八幡神社には、日役組となります。氏神様が違うんですよね。
でも祭礼の時には、唯一4輌の山車が揃う日が有るのです。
これを見逃すと、4輌の山車が揃う所を見る事が出来ないので要注意です。
●本板山組本子車 壇箱題材「七福神」初代彫常作
●小板組旭車 壇箱題材「天之岩戸」初代彫常作
●大湯組花王車 壇箱題材「仁徳天皇」初代彫常作
●日役組神力車 壇箱題材「神功皇后」早瀬蘭谷作
本板山組本子車の壇箱題材「七福神」とは、
一般的に恵比寿(えびす)、大黒天(だいこく)、福禄寿(ふくろくじゅ)、
毘沙門天(びしゃもんてん)、布袋(ほてい)、寿老人(じゅろうじん)、
弁才天(べんざいてん)福をもたらすとされている神ですよね。
また、小板組旭車の壇箱題材「天之岩戸」は、
先ほど紹介した岩滑新田奥組の壇箱と同じ題材です。
このあと紹介する下半田中組祝鳩車にも同じ題材が有り彫師も同じ人が彫っています。
でも、それぞれ違う物で、唯一無二な彫刻です。
4月中旬1地区で行なわれる山車祭りが「下半田祭礼」になります。
この地区は半田市の中心地で有り、江戸時代より醸造業や海運業が盛んでした。
昨年10月はんだ山車まつりの31輌の山車が勢揃いした場所です。
祭礼の歴史も古く元文4年(1739)の寺社奉行に提出された文書には、
既に山車が存在していると記載されていています。江戸幕府が存在していた時代ですね。
●北組唐子車 壇箱題材「唐子遊び」立川常蔵昌敬作
●中組祝鳩車 壇箱題材「天の岩戸」初代彫常作
●東組山王車 壇箱題材「力神、王処仙人隠栖」初代彫常作
●南組護王車 壇箱題材「護王の夢物語」初代彫常作
南組護王車の壇箱題材と同じものが美浜町布土上組護王車にあります。
彫刻師は、立川和四郎富重作になります。元々は南組の旧車でした。
今の彫刻は彫常作で、幾たびも、布土に足を運び旧車と同じ壇箱を彫り上げました。
5月上旬半田市内の山車祭りの〆となる「亀崎潮干まつり」。5輌の山車が曳き出されます。
平成28年には、「山・鉾・屋台行事」として、ユネスコ無形文化遺産への登録が決定しました。
山車を海浜へ曳き下しは見ものです。
●東組宮本車 壇箱題材「龍に虎」瀬川治助重光作
●石橋組青龍車 壇箱題材「風伯神・雷電神」竹内久一作
●中切組力神車 壇箱題材「海棠に親子鶏 力神」立川和四郎冨昌作
●田中組神楽車 壇箱題材「鉄拐仙人・蟇仙人・蘭亭の庭」立川常蔵昌敬作
●西組花王車 壇箱題材「太平楽の楽人」立川和四郎冨昌作
さて、どの山車も見どころ満載で裏ストーリーを一部紹介してきましたが、
ストーリーを知ると同じものでも観方が変わると思います。
何事でも、ストーリーが存在しそれを表現形にし、見せ伝えていく事は大切な事ですよね。
見かけだけでストーリーが無ければ、何も楽しくないです、相手にも伝える事が出来ません。
りんくう店には、コンセプトとゴールが有ります。
見ただけじゃ、なんの事かと思いますが、全て裏ストーリーが有るのです。
あのディズニーランドでも裏ストーリーが幾つか存在しています。
例えばスプラシュマウンテンのラケッティの話しとか。
見る前にストーリーを知る!見てからでも遅くはないので、
疑問を持って見ては如何でしょうか?
疑問を持つことで裏ストーリーの発見が有ると思います。
壇箱はなぜ?この題材なのか?
何が彫られているのか?なんて見に行ってもらえると楽しくなります。
是非来年の半田の春まつりで山車を見る時にはストーリーを気にして見て下さい。
最後に、この彫刻の題材はなんでしょうか??ヒント:夫婦です。
散歩したスタッフ:りんくう店 堀尾